今年度開催予定の東京オリンピック2020ですが、また思わぬトラブルを起こしてしまいました。
新型コロナウイルスの影響で、これまでどおり聖火リレーができないため会場を借りたのですが芝生を傷めてしまったんですね。
芝生の張り替えにかなりの金額がかかるようですが、どれくらい時間がかかるのか、なぜこれだけの金額になるのか調べてみました。
京都サンガスタジアムの芝生が変色した理由
京都サンガスタジアムの芝生を試合中継で見ていただくとわかる通り、スタジアムをぐるりと回るように黄色の線が走っています。
実はグラウンド内を聖火リレーの選手が走るだけでなく、メディアの車も芝生を走ったため芝が傷んでしまったんです。
当時の写真を見るとメディアの撮影車と乗用車2台ほどが同一の写真に見えるので、1周したどころの話ではないでしょう。
京都サンガスタジアムがある京都府亀岡市では怒りと悲しみの声が上がっています。桂川孝裕市長も2020年1月に完成したばかりのスタジアムが無残な姿になったことにたいしてコメントを出しています。
これから張り替えをするそうですが、相当な金額がかかるようです。
芝生を張り替えるのがどれくらい大変なのか、競馬場の芝の話もまじえながら調べました。
芝生の張り替えに500万かかるのはなぜ?
サッカーに関してはスタジアムのピッチ(選手がプレーするところ)を天然芝にするように要項で決められています。芝は当然ナマモノですから冬には枯れてしまったり傷むこともあります。
さて、芝生の張り替えに500万かかるということですが、これは「およそ」の金額だと思います。
芝の張り替えというと「生えている芝をはがして持ってくるだけでしょ?」とかつての私は思っていましたが、そう簡単ではありません。
理由として、
1野芝は根の匍匐茎が大事だから
2芝の張り替えに大型機械を使うから
3芝を張り替えた後のバーチドレンや硬度調整があるから
といったことが考えられます。
理由1芝は匍匐茎が大事だから
芝(野芝)は普通の草のように根っこだけで支えられていません。芝の下に匍匐茎という茎が横に伸びていてマットのようになっていて、このマット部分のおかげで芝は自己修復ができます。
競馬ですと馬の体重は500キロ、騎手の体重は50キロほどであることを考えると装備全部ひっくるめて600キロまではいかないでしょう。
ひづめで地面が削れたとしても木づちでトントンたたいて埋め、一時的な修理ができますが芝生の上を最低1トンはある車で走るのは想定していません。
しかも車でスタジアムを40周もしたということですから、匍匐茎に相当なダメージがあったでしょう。
5月25,26日に聖火リレーがあり、30日の甲府戦ですでに芝生の色が変わっていましたからね。
庭先の芝生であればランナーとよばれる匍匐茎を移植して復活させる方法もありますが、水やりの量が肝となります。
しかし競技場、スタジアムは(日本の場合)雨天時に水たまりができないよう水はけを良くしていますので、匍匐茎だけ移植して上手く定着させられるかは難しいと言えます。
そして変色した部分が広い範囲におよんでいるので、ある程度の面積が張り替えられる可能性もあるでしょう。
理由2張り替えに大型機械を使うから
張り替えがとにかく手間がかかります。たいていのスタジアムで冬場の対策としてウィンターオーバーシード(野芝の上に洋芝をまいて緑色を保つ)という方法がとられています。
おそらく今は夏にさしかかる頃なので洋芝はないでしょう。
グラウンドはきれいにならしてあることが大事なので、フィールドトップメーカーと呼ばれる「芝と匍匐茎を均一にはがす機械」で古い芝を取り除きます。
機械の大きさとしては農作業車と同じかそれ以上と考えたら、はがすのが大変なのもうなづけます。
ピッチをぐるりと囲むように機械をかけるのは現実的でないですから、ほぼ全面張り替えでしょう。
そしてある程度の面積を一気に張り替えるならビッグロール工法で広い面積を直していく必要があります。
匍匐茎を定着させてなじませる作業や時間がかかりますから、1か月後にはピッカピカというわけにもいきませんからね。
理由3張り替えたあとに硬度調整があるから
芝を貼ったあとは地面を固めればいいというわけではありません。
地面が固くなりすぎると土の中の酸素が少なくなって芝の成長に影響がでますし、選手の足元にかかるパワーをうまく受け止められずケガの原因にもなります。
体育館だってコンクリートのような固い素材で作られた床というのはなかなかないですよね?それと同じだと考えてください。
芝生の状態を維持するためにバーチドレンというローラー車を使って硬度調整することも必要になります。
そうなると部分的に張り替えても「一部だけ芝生が固い、柔らかい」と言う問題がおきてくるでしょうから調整が簡単でないのは想像がつきます。
まとめ~張り替えにはどれくらいかかる?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
芝生の張り替えが500万かかるということでしたが、その理由としてはちょうどいい具合にそだった芝の調達、張り替える時や古い芝を取り除く機械の使用料金が高いことなどがあげられます。
あれだけ広いスタジアムですから、数人がかりでの作業になりますしスキマがないようにしきつめる必要もあります。
ですから、芝の張り替えにかかる人件費+スタジアムに適した芝生の確保+複数の機械のレンタル代ざっと合わせると500万と言うことなんでしょう。
そして一部張り替えだとしてもサッカー以外の競技で使われることがあるスタジアム、そう長い時間使わず遊ばせるわけにはいきません。
変色したところだけ剥がすとなると最低限の作業になりますが、今度は変則的に切り取られたピッチの形に芝生をカットしてあわせる必要も出るでしょう。
ですので、競馬場のように
①イベントのない時期が数ヶ月単位である
ならばしっかり芝が養生してくれます。
しかし、ひっきりなしにイベントが立て込んでいるならば
②すぐに張り替えは厳しい
となります。
そうなると張り替えのために会場を休ませるということも起きるでしょう。イベントを他のスタジアムで開催させてもらうなどの調整があるでしょうから、もしかすると今年度いっぱいは変色したままかもしれません。
そしてきれいな芝に戻るには数ヶ月単位の時間が必要になります。また、芝生養生のためにスタジアムを使用できなかったことで生じる損害も補償されるべきでしょう。
匍匐茎が生きていれば復活するでしょうが、しばらくは様子見、現状維持となるのではないでしょうか。
参考サイト、参考資料
サッカー場の芝生管理についてサッカースタジアムの芝生管理に関する研究
馬場のすべて教えます~JRA全コース徹底解説~